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腕を折って腕を知る(手術編) [日記]

先生は自他ともに認める名医だ。

今日は月に一度の診察の日。

経過が順調で日常生活にはほとんど支障はなく、曲げ伸ばしした状態も見た目には大けがをしたとはわからない程だ。

「あの大けがからよくここまで回復しました。苦労した甲斐がありました…」

いや、あの、それ僕のセリフでは…



先生は自他ともに認める名医だ。

初めの手術前にも先生はこう言っていた。

「あなたのけがはとても重症です。でも大丈夫、私がオペしますから…」

いや、あの、自信がないよりはいいですが根拠の説明になってませんが…



先生は自他ともに認める名医だ。

2度目の手術前にも先生はこう言っていた。

「今回は一応こういう方法とこういう方法の2通りのプランでやるつもりです。」

おお、今回はめずらしく具体的な説明が…

しかし、その後に先生がもう一言。

「あとは術中の流れで…」

流れ…???



先生は自他ともに認める名医だ。

1度目も2度目も手術後の説明の時に先生はこう言っていた。

「難しい手術でした。でもこうやってこうやってこうやりましたから。ほら、ここなんてアイルトン・セナのように…」(1度目)

アイルトン・セナ?

「前例のない大変な手術でした。でも、この方法とこの方法とこの方法のいいとこどりで三重丸になりました…」(2度目)

前例ない??

しかも3通りになってない???

詳しいことは良くわからなかったが、先生は嬉しそうに説明していたことがとても印象的だった。



僕が思うに先生はきっと名医だ。

しかも天才的な。

結果オーライだから言えることかもしれないが、自他ともに認める才能は信用してもよさそうだ。

天才の説明は時に難解で、時に矛盾があり、そしてユーモアに溢れている。

僕は腕を折り、そして名医の腕を知った。

腕だけでなくユーモアもね。

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